社長失格
筆者の板倉雄一郎さんは千葉県船橋生まれ。
福島のおじさんの病院である板倉病院の跡取りとして
高校まで福島で過ごしました。
板倉病院は友人が勤めていますので、ちょっと身近です。
1990年代、インターネットに接続する方法として
ダイヤルアップが主流だった頃、
広告を組み込んで接続料を無料にするという
ビジネスモデルで世間をあっと言わせた
ベンチャー起業がありました。
その企業の名は「ハイパーネット。」
ハイパーシステムというシステムを携えて、
96年10月にはニュービジネス協議会のニュービジネス大賞まで受賞し、
その1年後の97年12月に破産という、ものすごいスピードで登り詰め、
ものすごいスピードで散って行きました。
私の印象として、板倉氏は次のような感じです。
ホリエモンの本を読んでいたので、
大きく打ち上げる方法などはかなり似ていました。
会社をどんどん大きくしていって、
そのスピードに周りがついて行かなくなったあたりや、
自分が周りを見る余裕がなかったあたりなどはそっくりです。
さて、本題のハイパーネットがなぜ倒産したのか。
筆者はいくつかあげていますが、
私は次のように思いました。
- 予想よりもトラブルが多かった。
- 予想よりも売上が伸びなかった。
- 資金調達の失敗。
- トラブルを未然に防ぐ能力の絶対的な欠如。
この中で資金調達の部分は本当に勉強になります。
ハイパーネットは短期返済の融資で銀行から融資を受けていました。
2億5千万とかいう金を毎月5千万ずつ返済するというやつです。
このくらいずつ返すというのは相当売上が上がっていないと
厳しいものがあります。
短期返済で過大な融資を受けるとどうなるのかがよくわかります。
ハイパーネットは短期の融資を全額返済と同時に
もう一度借りるということを期待していました。
しかし、銀行は2度目はありませんでした。
銀行には流行があり、ハイパーネットに融資をした頃は積極的でした。
しかし、97年はどこの銀行も資金の引き上げに躍起でした。
銀行に貸し剥がしに遭うというのはどういうことなのか。
この本には本当によく描写されています。
いかに銀行が酷いことをしたのかもわかります。
特に社長や役員の父親に連帯保証をさせようと躍起になったあたりは
人間として最低だと思いました。
さて、この時のメンバー、
- 板倉さん
- 大内さん
- 夏野さん
- 森下さん
- 筒井さん
一度会ってお話を伺いたいものだと思いました。
みんなすばらしいメンバーだったんだと思います。
いろんな風に乗ることが出来ずに
倒産してしまうという結果になっただけだったような気がします。
このような物語は一言では片付けられません。
参考になった一冊でした。
私がおお!と思った思考の転換部分は次の部分でした。
- 私はどうやったら自分の事業を潰せるかを考える。
自社の商品が売れなくなる時はどういう時かと考えるということ。
例えばダイヤルアップ無料接続の事業は
高速で定額の接続サービスが世に出て来たら潰れるだろう。
という思考。
自分も考えてみようと思いました。
私は成功よりも失敗から学ぶものの方が多いと思っています。
素敵な一冊でした。
私は福島で会社をやっているので、
ちょっと親近感がある感じもしました。